無口な彼の熾烈な想い
「俺と同じことをしていた頃があったって・・・今は大丈夫なのか?」

聞かない方が良いのかもしれないが、スルー(無視)することは最善ではないとたったいま鈴に教えられたばかりだ。

「ええ、やり過ごしたところで敵(毒親)は諦めません。それなら迎え撃つ方がまだマシ。こちらがいいなりになればあちらの思う壺だから」

鈴の言うこともわからないでもないが、絢斗には彩月に歯向かう気概もなければ度胸もない。

具体的にどうすれば・・・と口に出して聞こうと絢斗が身を乗り出したところに、ルイがイケメンギャルソン三崎を引き連れて料理を運んできた。

「わあ、素敵。まるでハリー◯ッターの挿し絵の世界みたい」

「コースとして少しずつ小出しにすることも考えましたが、それでは長い時間お客様を拘束してしまいます。密閉空間に長時間ステイすることを不安に思う方々もいらっしゃるかと思うので、とりあえずミニコースメニューを同時にお出しする予定で考えてみました」

テーブルに並べられたのは、サラダとパン、スープ、メインディッシュ2種の5点。

全ての皿を決められた通りに並べることで、一つの絵本が完成する。

クリスマスシーズンにちなんで、絢斗は緑色、鈴は赤の彩りを中心とした猛禽類の物語がそこには描かれていた。

猛禽類のイメージといえば、ヨーロッパ貴族や魔法使いといったファンタジーな世界だ。

森の中のフクロウやミミズクの生態を表現した緑の世界。

クリスマスに華を添えるイメージキャラクターとしての赤の世界。

緑黄色野菜やキノコを使った森のイメージは、パンやケーキの材料で作られた猛禽類達の存在感をこれでもかと高めている。
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