離婚するはずだったのに、ホテル王は剥き出しの愛妻欲で攻めたてる
 昨日私が遅番で仕事を終え、いつも通り十九時半頃にカフェを出たとき、店のそばに三時間ほど前に帰ったはずのあの男性が立っていたのだ。

 店ではまったく目も合わせない男性は私の姿を見つけると、ニタリと妖しい笑顔を浮かべた。その様に、さすがの私も危機感を感じざるを得なかった。

 あの男性が私のシフトを把握できるはずはない。ということは、店の外から私がいるのを確認しているのかな。

 昨夜の恐怖を思い出し、背筋がゾッとする。あの男性はやはり今日も当然のように店にやって来て、私は自分が追い詰められているような心地になった。

 しかし、昨日も接触はされていないし、追いかけられたわけでもない。ただ見られているというだけでは警察に相談まではできないでいた。

 それでも店に迷惑をかけてからでは遅いし、店長には報告くらいしておいたほうがいいよね。とりあえず今日は私が店を閉める日で店長はいないから、明日店長に会ったら話してみよう。

 そう決断した私は、不安な気持ちを呑み込んで作業を続けた。
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