離婚するはずだったのに、ホテル王は剥き出しの愛妻欲で攻めたてる
 先日この男への憎しみを新たにしたばかりじゃない。高城の気持ちをこちらに向けるために普通の夫婦、よき妻を演じるのは仕方がないが、それに慣れるなんてあり得ない。

 あの男性客の件が気がかりで、完全にどうかしてしまっていた。

「もう寝ようか」

 優しくささやく高城は私の手を引き、立ち上がらせると、手を繋いだまま寝室へと進んでいく。間接照明の常夜灯が、室内に優しい光を与えてくれていた。

 並んでベッドに入ると、高城が私の頭の下に腕を入れ、包むように抱きしめる。

「おやすみ」

 柔らかな声が降ってきて、後頭部を撫でられた。私も「おやすみなさい」と返す。

 入籍してから一か月以上が経ち、こうして眠るのが私たちの日常になっていた。
< 108 / 204 >

この作品をシェア

pagetop