離婚するはずだったのに、ホテル王は剥き出しの愛妻欲で攻めたてる
 気圧されたように息を吸い込んだ私は、改めて高城を見上げた。

 本当に、あの高城なんだろうか。

 にわかに信じられない気持ちになり戸惑いながらも、私はこの機を逃すわけにはいかないと声をかけた。

「助けていただきありがとうございました。こういった場は不慣れで……」

「それより手を見せて」

 高城は、小太りの男性に掴まれていた私の手を取る。私は反射的に勢いよく手を引っ込めてしまい、はっとした。

「すみません……」

 必死に平静を装おうとするけれど、動揺を隠しきれなかった。

 突然触れられ、つい身体が反応してしまった。

 気まずさから思わず目を伏せると、高城がふっと小さく笑う声が聞こえてくる。私は男のほうへ視線を投げた。
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