離婚するはずだったのに、ホテル王は剥き出しの愛妻欲で攻めたてる
 駅のまわりは人が多く賑わっているけれど、次第に静かな住宅街へと入る。ひんやりとした風に足もとを撫でられ、思わず身震いした。

 夜はずいぶん気温が低くなってきた。そろそろ本格的なアウターが必要になりそうだな。そう思い、羽織っていたマウンテンパーカーのファスナーを閉める。

 早く帰ろうと早足になると、私は突然背後に人の気配を感じて立ち止まった。振り返るが、そこに人の姿はない。

 うしろに人がいたような気がしたんだけど、気のせいだったかな。

 身体から恐怖が一気に溢れ出す。

 駅までは店長の車で帰ってきたし、あの男性もさすがに家までは知らないよね。

 自分に言い聞かせるように心の中でつぶやくけれど、不安に掻き立てられる。いてもたってもいられなくなり、私は地面を蹴って駆けるように足を進めた。

 しかし、やはり私のものではない靴音が先ほどよりもスピードを上げて追ってきている。

 怖くて振り返れない。
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