離婚するはずだったのに、ホテル王は剥き出しの愛妻欲で攻めたてる
 高城の手がこちらに伸びてきて、男の親指が私の唇をなぞった。今しがた男にキスされたのを思い返し、私の鼓動が大きく跳ねる。

 今さらキスくらいで慌てるな。すでに身体を繋げて、そのときに唇だって重ねたじゃない。たとえ今のキスに想いが乗っていたからといって、私がこの男に感情を揺さぶられるなど――。

「今すぐ君が欲しい」

 考えのさなか発せられたその言葉に、私は緊張の鼓動が聞こえた。

 同居して初めての夜以来一度も求めてこなかったくせに、どうして今。

 胸が締めつけられ、途端に息苦しくなる。

 弱っているところを助けられて、心が勘違いしているだけ。この行為だって、私にとってはこの男の心を動かすための手段に過ぎないのだから。

 私は決まりが悪く火照った顔を高城から背け、ゆっくりとうなずく。男は私を抱き上げ、寝室へと向かった。
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