離婚するはずだったのに、ホテル王は剥き出しの愛妻欲で攻めたてる
 
 高城は、エレベーターを降りてホテルの廊下を少し進んだところでふいに足を止めた。

 目の前には、椅子や机がいくつも並んでいるのが目に入る。高層階からの絶景が望める窓側には、ゆったりと寝ころべそうなリクライニングチェアまで設置されていた。

 ここは、休憩スペース?

 広々としていて、天井からぶら下がったオレンジ色の照明がほの暗い光を落としている。落ち着いた雰囲気も相まって、まるでラウンジのようだった。

 入り口のほうでぼーっとしていた私に、先に中へ足を進めていた高城が声をかける。

「こっちへ」

 高城は休憩スペースの奥にある、衝立(ついたて)が立てられている人目のつかなそうな席へ私を誘導した。

「どうぞ」と促され、私はひとり掛けのソファーに腰を下ろす。

 そこへホテリエの男性が、なにかを手にこちらへやって来た。さっき、ここへ来る途中に高城が声をかけていたホテリエだった。
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