離婚するはずだったのに、ホテル王は剥き出しの愛妻欲で攻めたてる
 高城は私の頬に手をやり、自分のほうへ向かせる。ゆっくりと男の顔が迫り、目を閉じると唇に温かい感触が訪れた。

 それは一度離れ、再び私の唇を塞ぐ。そしてしばらくしてから名残惜しそうに遠ざかった。

「じゃあ、今日はキスだけで我慢するよ」

「いいんですか?」

 私は、いささか狼狽えつつ訊ねる。

 二度目に身体を結んだあの日以来、高城は毎晩のように私を求めてくるようになった。

 彼の中でいったいどういう心境の変化があったのかはわからない。しかし私は、ほぼ毎晩この男に抱かれていた。

「俺は君の身体だけがほしいわけじゃないから。俺は君と心を通わせ合った夫婦になりたい。まつりはどう思う?」

「どう思うって……そんなの私も同じ気持ちに決まってるじゃないですか」

 私が言うと、私の頬を包んだままの高城は侘しげな微笑を浮かべる。
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