離婚するはずだったのに、ホテル王は剥き出しの愛妻欲で攻めたてる
「悠人さん? どうしてここに……」

 そこにいたのは、黒いスーツを身に纏った高城だった。

 驚きのあまり絶句する私のもとに突如強い風が吹き上がり、髪を舞い上がらせる。視界が奪われ、高城の姿は窺えなくなった。

 次第に風が止み、髪ははらはらと肩に落ちる。しかし、再び視界が開けると、先ほど私が目にした光景は幻ではなかったと思い知った。

 息もつけないほど驚いていた私は、高城のすぐそばにいた人物を視界に捉え、さらなる衝撃を受ける。

「あなたは――」

 高城と同じく黒いスーツに黒のネクタイを締めた、すらりとした中年の男性。高城とよく似た切れ長の目は、私を映して悲しげに影を落としていた。

 その顔は、昔とほとんど変わっていない。

 高城の父、『株式会社シュペリユール』の社長――高城侑成(ゆうせい)だった。
< 151 / 204 >

この作品をシェア

pagetop