離婚するはずだったのに、ホテル王は剥き出しの愛妻欲で攻めたてる
 再び私の肩を抱く高城に、きつく抱きしめられる。涙に顔を覆っていた私は、心の中でくすぶっていた疑問をぶつけた。

「じゃあ、私が以前ホテルの中にあるレストランで食べたあの豆腐は――」

「まつりのお父さんが、父にレシピを託してくれたらしい。以前俺も、俺もまつりのお父さんから添えられた手紙と一緒に見せてもらった」

 父が、高城の父に豆腐のレシピを? いくら頻繁にうちの豆腐を口にしていたからって、豆腐作りの経験がない人が簡単に真似をして出せる味ではない。

 でも、あのときホテルで私が食べたのは、間違いなく父の豆腐と同じ味の豆腐だった。

 あれは父の大切なもの。あれを託したということは、本当に……。

「父は、病気だったんですね……」

 すべてを受け入れた私がつぶやくと、高城が私の頭を包んでさらに強く抱きすくめた。
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