離婚するはずだったのに、ホテル王は剥き出しの愛妻欲で攻めたてる
「俺が君を知って好きになったように、まずは同じ時間を過ごして俺という人間を知ってもらうしかないと思った。君に向けてひたむきに生きていれば、いつかは伝わるかなって」

 冷静にハンドルを握っていた彼が、穏やかな顔つきで答えた。

 そんな長期戦を覚悟してくれていたんだ。

 しかし、現に私はこれまで悠人さんのまっすぐな優しさに何度も胸を打たれた。一途な想いはこうして伝わるものなんだと改めて身に沁みて感じる。

「でも、長い時間君をただ見ているしかできなかったから、実際話してそばにいられる生活は楽しくてあっという間だったよ。いつも触れたくて、耐えるのが大変だったけど」

 悠人さんはいたずらに言った。私は狼狽し、頬に一気に熱が上るのがわかる。

「ただ見てきた君より、一緒にいて同じ時間を過ごしたまつりはさらに魅力的だった。意外に表情豊かで、よく芝居を忘れて純粋に照れていて」

 そこまで話した悠人さんは、言葉の途中で思い出したかのように声を立てて笑い始めた。羞恥に肩をすくめる私を横目に見た彼が、優しく顔をほころばせる。
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