離婚するはずだったのに、ホテル王は剥き出しの愛妻欲で攻めたてる
「もっといろんなまつりを知りたい。だから君も、これからも一生俺の隣にいてほしい」

 信号が赤になり、車が停車する。こちらを向いた悠人さんは、私に慈愛の眼差しをそそいだ。

「こちらこそ。よろしくお願いします」

 この想いは、一生口に出すことはないと思っていた。

 私を必要としている悠人さんに離婚を申し入れて、たとえ離れてからも忘れられなかったとしても、人を騙して傷つけた報いとして抱えて生きていこうと心に決めていた。

 それがこんなふうに想いを伝えあって、通じ合う日が来るなんて。人生なにがあるかわからないものだな。

 信号が青に変わり、再び車は走り出す。

 両親の墓石の周りに落ちていた紅葉を一枚持ち帰った私は、ポケットから取り出したそれを手のひらに乗せた。
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