離婚するはずだったのに、ホテル王は剥き出しの愛妻欲で攻めたてる
 お父さん。私に病気だと言えなかったのは、心配すると思ったから? そりゃあするよ。させてよ。だって、お父さんは私のたったひとりの父親だもん。

 こんなに思ってもらったのに、復讐なんて考えてごめん。これからはせめてお父さんたちに心配かけないようにするから。

 手の中の紅葉の葉を、私は大事にポケットの中へ戻した。

 今はまだ完全に気持ちの整理をつけられていない。それでも九年ぶりに軽やかになった心は、今日の秋空のようにぽかぽかと温かかった。
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