離婚するはずだったのに、ホテル王は剥き出しの愛妻欲で攻めたてる
 以前テレビなどで見かけてそのチャペルの存在を知っていた私は、悠人さんに式の場所の希望はあるかと訊ねられたとき、この場所の名前を口にした。

 まさか私がシュペリユールのホテルを希望すると思っていなかったのか、悠人さんは珍しく驚いた顔つきを浮かべていて『遠慮しないで国内外どこでもいいんだよ』と言ってくれた。

 しかし、どうしてもシュペリユールのチャペルがよかった私は、気に入ったこの場所がいいとお願いした。

 シュペリユールは、いろいろあった私たちの始まりの場所でもある。

 悠人さんのお父様がうちの豆腐に惚れ込み父とシュペリユールが契約を交わさなければ、私たちふたりも出会わなかった。

 そう思いの丈を伝えると、悠人さんも『そうだな。そうしよう』と賛成してくれた。

 絶望に身を委ねていた私が真実を受け入れることができたのも、いつも悠人さんが優しく寄り添い続けてくれたから。何年もかけて見守ってくれていた彼には感謝の言葉もなかった。
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