離婚するはずだったのに、ホテル王は剥き出しの愛妻欲で攻めたてる
 今日まで与えてもらったたくさんの想いを、私も悠人さんに返せるのかな。

 受けた愛が大きすぎていささか不安になった。

 つい思いを巡らせていた私は、ドアがノックされる音がして、ビーズがキラキラと輝くドレスの裾を持ち、立ち上がる。

 おぼつかない足取りでドアへと向かい、金で縁取られた白いそれを開けると、最愛の人――悠人さんが顔を覗かせた。

 控室に足を踏み入れた彼は、私の全身にゆっくりと視線を送り、頬を緩める。

「すごく綺麗だな」

 甘い言葉をかけてくれる悠人さんに、私は顔を火照らせつつもはにかんだ。

 そんな彼も、今日は濃紺のタキシード姿に身を包んでいる。丁寧にセットされた髪はまたいつもと違う雰囲気を醸し出していて、とてもかっこよかった。

 長い手足がすらりと伸びていて、まるでモデルみたい。
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