離婚するはずだったのに、ホテル王は剥き出しの愛妻欲で攻めたてる
「勉強熱心なんだね。どうだろう。もし君がパーティーに戻るなら、またあんなことがないよう今度は一緒にいさせてくれないか?」

 思いもよらぬ申し入れに、私は「えっ?」と驚きの声を上げる。願ってもない提案だった。

「いいんですか? 高城さんもお仕事でいらしているのに、お忙しいんじゃ……」

「だから退屈させてしまうかもしれないけど、俺のパートナーということにして一緒に回れば君もさっきよりかは気軽に楽しめるかと思って」

 言い終えた高城は保冷剤を外した私の手を確認し、安堵したように一度「うん」とうなずく。その様子を見つめていた私は、「……パートナー?」と口にしていた。

 驚いて目を瞬かせる私に、こちらを見上げる高城が「どうかな」と小首を傾げる。

 ここまでうまくいくなど想定していなかったので予想外の展開にいささか当惑するけれど、こちらから仕掛ける必要もなく接近できたならなにも問題はない。

 私は、男に微笑みかける。
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