離婚するはずだったのに、ホテル王は剥き出しの愛妻欲で攻めたてる
 そしてこの男の言う通り、都内にあるシュペリユールの本社とカフェはそれほど離れていない。いつか偶然高城がカフェを訪れるかもしれないと期待していたのも事実だった。

 今までまったく接点が作れなかったと思っていたけれど、私の気づいていないところでわずかに繋がっていたんだな。

「今度は店に行くよ」

 そう言う高城に、私は「ありがとうございます。待ってます」と告げた。

 すると、わずかにこもった振動音のようなものが耳に届く。一瞬動きを止めた高城が、ジャケットのポケットからスマートフォンを手にした。

「電話だ。ごめん。すぐに戻るからゆっくり飲んでいて」

 男は、スマートフォンを片手に席を立つ。私は高城のうしろ影が出入り口のほうへ消えていったのを確認してから残っていたカクテルを飲み干し、カウンターの向こうにいるバーテンダーに同じものを注文した。
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