離婚するはずだったのに、ホテル王は剥き出しの愛妻欲で攻めたてる
「『結婚する必要があるなら私と結婚しませんか?』って言ってくれたのに」

 私が?

 驚きのあまり絶句する。

 最悪だ。順番もなにもかもすっ飛ばしてそんなことを言ったなんて。酒に酔って絡み、挙句の果てに眠ったところを家まで運ばせて。

 結婚どころか、こんな女と今後会いたいとさえ思うはずがない。今まで長い時間をかけて慎重に計画を進めてきたのに、最後の最後に自分ですべてを水の泡にしてしまった。

 全身の力がみるみる抜けていく。自分が悪いとわかっていても、両手をベッドにつかずにはいられなかった。

 いっそこのまま誘ってこの場だけでも関係を持ち、その話を出版社に提供する?

 しかし、それでは大した復讐にならないし、相手は大企業のシュペリユールだ。スキャンダルなど簡単にもみ消されるかも。そんな事態になれば二度とこの男に復讐などできなくなる。

 私はただこの男を困らせたいわけじゃない。あのときの父の気持ちを味わわせたいのだ。それには小さなスキャンダルでは意味がない。
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