離婚するはずだったのに、ホテル王は剥き出しの愛妻欲で攻めたてる
 混乱する頭を回転させていたところで、私は唐突に先ほどの高城の言葉を思い出す。

 待って。さっきこの男、残念だって言わなかった?

 私がおそるおそる高城を見やると、男は緩やかに口角を上げていた。

「覚えてない?」

 高城の柔らかな声色が、私の脳内をぐるぐる駆け巡る。

 なんと答えるのが正解なんだろう。

 私は息を呑んでから、ゆっくりと口を開いた。

「覚えてるって言ったらどうするんですか?」

 高城の真意がわからない中、賭けに近かった。鼓動が痛いほどに速くなる。

「もしあの言葉に少しでも君の本心が混じっているなら俺と結婚してほしい」

「……冗談、ですよね?」

 考えるよりも先にそう訊ねていた。

 そのまま「はい」と答えていれば大幅に目的に近づけたということに、遅れて気がつく。
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