離婚するはずだったのに、ホテル王は剥き出しの愛妻欲で攻めたてる
 食事を終えて郁実と店を出ると、夜は秋の訪れを思わせるように冷たい風が歩道に落ちた街路樹の葉を運んでいた。見上げると、湿度が下がった空には星が輝いている。

「まつり?」

 足を止めていた私に、駅に向かい先に歩き出していた郁実が声をかけてくる。

「なんでもない」

 その場で答え、うつむき加減に郁実を追いかけた。

 綺麗なそれらが自分を照らしているようで、私は直視できなかった。
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