離婚するはずだったのに、ホテル王は剥き出しの愛妻欲で攻めたてる
 
 髪を乾かし終えてドライヤーのスイッチを切った私は、熱風で乱れた髪を整えながら、洗面ボウルがふたつある大きな洗面台の鏡を覗く。

 そこには、湯上りでわずかに赤らんだ顔が映っていた。

 パーティー会場であの男に会う前も同じようにしていたなと思い起こし、いささかおかしくなる。

 あの男、もう眠ったかな。

 婚姻届けを記入したあと、私たちは休憩してからそれを区役所に提出しに行った。私は戸籍上高城になり、あの男の妻になった。

 そのときすでに夕方だったこともあり、私たちは外で簡単に食事をしてマンションへ戻ってきた。

 私はバスルームを出て、廊下を進みリビングのドアを開ける。

 先に風呂に入り、ソファーに座ってテレビを眺めていた高城が、私に気づきこちらを向いた。
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