離婚するはずだったのに、ホテル王は剥き出しの愛妻欲で攻めたてる
「おかえり。わからないことはなかった?」

 白のTシャツにグレーのカーディガンを羽織り、下は黒のスウェット姿の高城が言う。

『お風呂の準備ができたから、まつり先に入っておいで』と告げた高城に、私は『あとでいいです。悠人さん先にどうぞ』と答え、先に入浴してもらった。

 一応湯上りの姿を見せなければならないので、なんとなく心の準備が必要だったのだ。私は男が先に眠っているのをわずかに期待したけれど、残念ながらやはり高城は私を待っていた。

 まぁ、結婚初日に加え、引っ越してきてすぐで勝手がわからない妻を置いてさっさと寝る旦那なんてそういないか。

 私は心の中で肩を落としながら「はい。大丈夫でした」と返し、部屋着のショートパンツの裾を掴んだ。

「それならよかった」

 くつろいだ顔つきになる高城の髪が、さらりと揺れる。
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