離婚するはずだったのに、ホテル王は剥き出しの愛妻欲で攻めたてる
「あれ、座っててって言ったのに」

 困ったように言う高城は私の手を取り、ソファーへと連れていった。腰を下ろした私に、男は「はい。喉渇いただろ」とグラスを手渡す。

 高城の言う通り喉が渇いていた私は「ありがとうございます」とそれを受け取り、グラスに口をつけた。冷たい水が喉を潤していく。

「寝室、一緒にしたんだけど問題なかったよね」

 ふいに発せられた言葉に、私の心臓が大きく跳ねた。思わず水を吹き出しそうになり、軽く咳き込む。

「大丈夫?」と驚いた様子で背中を擦ってくる高城に、私は苦しげに絞り出しながら「すみません。大丈夫です」と告げた。

 おそるおそる高城に眼差しを送ると、男は「もう遅い。そろそろ寝ようか」と先に寝室へと歩き出す。足を止めた高城は寝室のドアの前で振り返り、私を待った。

 心臓の音が異様に亢進(こうしん)していく。
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