離婚するはずだったのに、ホテル王は剥き出しの愛妻欲で攻めたてる
「悠人、さん?」

 私の頭の両端に手をつき、覆い被さる高城は、切れ長の目をわずかに細めて私を捉えている。

「これから夫婦になるんだから、身体の相性くらいたしかめておこうか」

 静まり返った部屋に、高城の落ち着いた声が響いた。

 結婚を手段に選んだ以上、もちろんこういう可能性があるのもわかっていたし、覚悟だってしてきた。

 身体から落とすという言葉もあるくらいだ。復讐するためならなんだって捧げてやると心に決めていた私は、身体を重ねたほうが心だって早く手に入れられるかもしれないとさえ思っていた。

 しかし、いざそのときが間近に迫ると、こういった経験がない私は全身を強張らせる。
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