離婚するはずだったのに、ホテル王は剥き出しの愛妻欲で攻めたてる
 私は、高城の腕を強く抱き込んだ。

「悠人さん、女性を褒めるのに慣れているんですね」

 自分ばかり動揺させられ、ついそんな悪態が口をついて出る。

「誰にでも言ってるわけないだろ」

 そうつぶやいた高城が、突然その場に足を止めた。

「君だから。俺はまつり以外にこんなことは言わないよ」

 高城は、優しく諭すような口調で言う。私は、全身の血液が顔に集まっていくのがわかった。

「……そう、ですか」

 狼狽(うろた)えて返す私は、男の腕を引くように再び歩き出す。斜めうしろから高城が笑みを噛み殺しているような声が聞こえていて、私はひどく面映ゆくなった。
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