離婚するはずだったのに、ホテル王は剥き出しの愛妻欲で攻めたてる
 一瞬にして私の中の時間が子供のときに巻き戻った。

 これは、父が作った豆腐だ。

 呆然としていた私の視界がぐにゃりと歪んでいく。頬に温かなものが伝っている感触があった。

「まつり?」

「あれ、すみません。私、どうしてこんな……」

 慌てて涙を拭うけれど、それはなかなか止まらない。私の意思とは関係なく、次々と溢れてきた。

 泣くな。こんなところで泣いたら高城に変に思われる。私の復讐はまだ終わっていないのだから。こんなところで気づかれるわけにはいかない。

 私は手で顔を覆い、必死に涙を止めようと努めた。
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