これを愛というのなら
「蓮と話せた?」


ショーウィンドウの衣装を着せ終わった梓が、鈴木に聞いてるけれど。

おそらく鈴木は、聞いてねぇな。

真剣な表情で、マネキンに衣装を着せているから。


「しっかり、話させてもらいましたよ」


仕方ねぇから、代わりに答えといたからな。

鈴木。


ありがとう、と。

梓が、俺に横から抱き付いて見上げたあと。


終わったぁぁ!!

背伸びをして叫んだ鈴木を見て、俺も梓も、つい笑ってしまう。


「なんで、二人で笑ってるんですか?」


なんでもない、と二人同時に言っていた。

もう!と、また膨れっ面になる鈴木。


「鈴木さ、その膨れっ面。可愛すぎる」


でしょ?と笑う、梓に。


「彼氏が、他の女の子に可愛いって言ってるのに。嫉妬しないんですか?」


「いちいち、嫉妬してたら疲れるじゃない」


私なら嫉妬しちゃう、と返した鈴木は、


「料理長は、その立ち方やめてください!かっこよすぎて心臓に悪いです!」


いちいち突っ込んでくれるから本当に面白い奴。


壁に寄り掛かって。

シェフパンツのポケットに手を入れて、立っている俺。


普通に立ってるだけで、そんなにかっこいいか?


「料理長は、顔が綺麗だし。スタイルもいいから、かっこいいんです!」


梓も、俺を見上げて頷いている。


「自分でそんなこと、思ったことねぇからな」


そんなことより、鈴木。惚れんなよ?


「惚れませんけど、惚れんなよって。料理長の声は低くて、少し掠れてて。ただでさえ、色っぽい声なのに。わざと…ワントーン低くくして、言わないでください!また、ときめくじゃないですか!」


膨れっ面になって、ムキになって言う鈴木に。


「本当に可愛いすぎ」


「うん、可愛いね」


梓にも、言われて。


「二人してからかわないでください!」


可愛いって思ったから、可愛いって正直に言ってんだろ?からかってるわけじゃねぇよ。
梓より先に、鈴木と出会ってたら恋に落ちたかもしれねぇな。鈴木の顔、俺のタイプだし。



一気に、鈴木の顔が赤くなる。

梓は、微笑ましく鈴木を見ている。


「もう!やめてください!」


「悪い、悪い」


赤い顔を手で、扇きながら。

悪いって本当に思ってないですよね?


「思ってるぜ。今日は、これくらいにしといてやるよ」


「2度と、可愛いとか言わないでください!悪いと思ってるなら」


はいはい、と俺が笑いながら言うと。

梓が、それくらいにしてあげて、と俺を見上げて言った、タイミングで。



梓ともっと、一緒に居たいけど。

あと数時間もすれば会えるしな。

今よりたくさん、触れられる。



「そろそろ、戻るな」


頑張れよ。


「うん!ありがとう。気を付けてね!」


「ありがとうございました!」


梓と鈴木に、見送られて。

会社に戻って、2階奥の喫煙場所で。

陽介を捕まえた。
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