異世界転生したから、楽しくスローライフを送りたい!!
「シェーナ。この子達、ここで留守番を頼むのは……」
そんな声をかけてきたセインお兄様の肩には三羽の風の精霊がしっかりくっ付いている。
「セイン。私たち、ちゃんと王都では学生寮でしっかり留守番してるわ。だから連れてって。私たちはあなたが気に入ったから、そばで加護を与えていたいのよ」
そんな精霊の声に、セインお兄様はお留守番を頼むことを諦めた。
「俺たちには可愛すぎるけれど、シェーナの手作りだし、その中身は精霊だし、一緒にいるのは良いんじゃないか」
カインお兄様の言葉に、くっ付いてたクマとウサギのぬいぐるみは嬉しそうにしている。
「私たちも、最近はずっと一緒だもの。あなたたちも連れて行きなさい。精霊の加護を受けられるなんて機会はそうそうないのだから」
そんな見送りに出てきたお母様の言葉にお兄様二人は頷くと、五体のぬいぐるみと共に王都へと旅立って行った。
そうして楽しく家族と兄妹で過ごした夏は過ぎ、私は秋の実り多い森をルーチェさんに教わりながら、やはりこの時期にしか取れない薬草を採取していた。
最近は薬草から薬を煎じるのも、ルーチェさんに教わって出来るようになってきた。
私の作るものも、効能はしっかりしておりこのままなら、薬師の魔女の称号もそのまま引き継げそうだねとルーチェさんは穏やかに微笑んで言った。
動物たちも冬支度を始めた、秋の半ばには私たちも冬支度を始めねばならない。
ここに来ては初めて迎える冬。
辺境は隣だった自分の生家とは違い、雪が深いのだとリーネが教えてくれた。
そんな冬の間は、夏に牧草地で育った羊から刈った毛で紡いだ毛糸で編み物をするのが冬の間の仕事なのだという。
そのために、今回は薬草と共に、秋の花の中から染料になる花も摘みルーチェさんの家に戻ってからは毛糸を染めたりもして、着々と準備を進めていった。
冬、雪が深くなる前にはお兄様二人もまた帰ってくるだろう。
私はそれを楽しみに、ルーチェさんや両親とつかの間過ぎてしまう秋を満喫したのだった。