俺のカノジョは


華奢だと言っても大人の女性が全力で向かってきたので、俺は後ろへひっくり返る。



「うわっ……元気だな」



笑って頭を撫でると、彼女は子どものように泣きじゃくった。



「ひくっ……だってまろちゃんがっ……」




泣きすぎて何言ってるかわかんねぇ……。


俺の服を濡らし、嗚咽交じりに聞こえてきた話をまとめると。




前に付き合っていた彼氏が、オタクを否定したんだと。

アイドルを応援する春香の姿を見てドン引きし、みっともないからやめろと言われたらしい。

そこで衝突し、好きなものが好きだと次第に言えなくなり……。

元カレには隠しながらライブや舞台に行ったりしていたそうで。

ある日、それがバレて……アイドルオタクの女なんて気持ち悪いと言われて別れたそうな。



だから、俺にオタクだってこと黙ってたのか。



そういえば、思い出した。

この前、朝が弱い春香が6時前にテレビを見ていたことがあったが……あれは、彼女が好きなアイドルが映っていたような。

新曲の情報解禁で早起きしたってことか……。




そんで、元カレのトラウマねぇ。




「俺も、元カレと一緒だと思われていたことの方がショックだわー」

「ご、ごめんっ……」

「俺、最近予定詰まりまくってるから、浮気でもしてるかと思ってた」

「そ、それはないっ!」

「うん、わかったよ。これだけ泣くんだから怖かったんだろ」

「まろちゃーーーーん!」





俺の上に乗っかって抱き着いている春香。

ラグマットの上に寝っ転がったまま、彼女を抱きしめて泣き止むように頭を撫で続けた。




泣き止んだのは随分と時間が経ってからで。

涙と鼻水まみれになった俺に対して春香はひたすら謝り続けた――――。

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