明日、雪うさぎが泣いたら

満足して大人しくなったお腹を撫で、自室で寛いでいた私のもとに一彰がやってきた。



「ちょっと。一応、こっちは裳着を済ませた姫君なんだよ。堂々と上がり込んでくるってどうなの。そして、その顔をやめて」


そうは言ってみたが、前半は然程気にしていない。問題はその汚らわしいものでも見下ろすようなその顔だ。


「それを言うなら、裳着を済ませてかなり経った、だろ。大雪姫。今日も相変わらず変わり映えもしない。ご機嫌麗しそうで何よりだ」


一彰がつけた大嫌いなあだ名で呼び、不躾に上から視線を注ぐのをやめない。
どちらも私が嫌がるのを知っているのだ、もちろん。
ちなみにあだ名の由来は名前に係っているのと一彰にとって「面倒・かつ迷惑だから」だそうだ。


「それくらいにしろ。仲がいいのは結構だが、見るにも聞くにも堪えない」


それから、もう一人。
一彰の後ろで、本来ならあいつよりも気を遣う必要はないだろうその人が、その裳着を済ませた姫君から、ほんのちょっと目を逸らして立っていた。


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