魔界の華は夜に咲く
真っ白な世界でセンジュは目を覚ました。
「眩しい・・」
見回しても何もない。まるで死後の世界かと思われるほど、何もない世界だった。
「なにこれ・・私、どうしちゃったんだろう・・」
辺りを見回していると、ぼやぼやとした影が現れた。
「?」
その影はゆっくりと姿をなした。
「マ・・ママ?」
その影は母親の形に変化した。
『センジュ・・私のセンジュ』
「ママ!?」
センジュの声は聞こえていない様だった。
『あなたには、人間として普通に暮らしてもらいたかった・・ごめんね』
「え?どうして謝るの?私、パパにも会えたし・・なんとかやってるよ!」
しかし訴えても声は届かない。
『センジュ、ごめんね、ごめんね』
「なんで謝るの!?なんでママ!!」
『ごめんね・・ママがいけないの』
「え?」
『あの日あの人を・・愛してしまったから』
その言葉は理解できなかった。
_ママはパパを好きだったんじゃないの?なんでそんな事言うの?
『守ってあげられなくてごめんね』
「マ、ママ!?何を知ってるの!?教えてよ!」
『センジュ・・』
「ママ!!?」
ガツッ!!
突然起き上がったセンジュに、エレヴォスは倒された。
「え!?」
「うう・・痛た・・」
どうやらエレヴォスの顎に自分の後頭部をヒットさせてしまった様だった。
「え!?ごめんなさい!何かしました!?」
「い、いえ・・平気です。というか、あなたは平気なのですか?」
「え?はい」
エレヴォスは困りながら出来事を教えた。
「突然意識を失って倒れかけたので、抱きとめたのです」
「え!?すみません!」
「ほんの少しの間でしたので、名前を呼んだらすぐに目を覚まして、私の顎に・・直撃しました」
「うわわっ・・本当にごめんなさいっ」
平謝りだ。
「貴女は大丈夫でしたか?」
「はい・・夢を見ていたみたいで」
「夢?今の一瞬で?」
「はい。ママの声が聞こえたんですけど・・」
その言葉にエレヴォスの顔が真顔になった。
「アンジュ様が、何か?」
「う~ん・・ごめんねしか言われなくて・・全然意味不明でした」
「・・・そうでしたか」
いつもにこやかなエレヴォスが珍しく顔をしかめている。
その異様な空気にセンジュは首を傾げた。
「何か、知ってるんですか?ママの事」
「いえ、何も・・ですが、もしかしたらアンジュ様の魂がセンジュに直接語り掛けてきたのではと思ったのです」
「ママが・・」
_確かに、そんな感じだった・・。でも、一体何で?
「我が君ならアンジュ様の魂ををこちらへ連れてくる事が可能なのでしょうが・・」
「それは駄目です。だってママの魂は天界へ登っている途中なんですよね?危険な場所なんですよね?」
「よくご存じで・・」
「この前パパに同じ事を言ったら、そうだって言ってたから」
「冥界と天界の入り口付近にアンジュ様の魂は彷徨っています。しかし、そこは天界の領域になりますから、天使と相まみえる事は目に見えているのです」
「天使と戦うって事ですか?」
「まあ、あちらも突然魔界の王がやってきたら流石に怯むとは思いますが、大ごとになりかねませんしね」
「じゃあ、やっぱり駄目ですよ!パパを危険な目に合わせるなんて出来ないし」
「うーん・・アンジュ様の手がかりがあればさっきの夢が何かわかるのでしょうか」
「手がかり・・かぁ」
_って言っても、ママは普通の人間なんだし。あ、ていうかお葬式の後って家はどうなったのかな!?私の存在って人間界ではどうなってるんだろう?
「あ、そうだ!」
閃いたセンジュに、勘のいいエレヴォスは首を横に振った。
「駄目です。人間界には行けませんよ」
「え?どうして?」
「危険です。それこそ裏・四大魔将の思うつぼですし」
「そうなんですか?」
「はい。その前に勝手な真似をすれば、私があの方に消されます。貴女を危険な目にあわせないようにとお達しなのですから」
しょぼん。
はっきりと断られた。しかも単純な思考回路は読まれていた。
センジュはがくりと肩を落とした。
_でもさっきのは気になる。なんであんなにママに謝られたんだろう?パパなら何か知ってるのかな?
後で本人に聞くしかないとセンジュは決心した。
「それとご忠告ですが、さっきの力のコントロールを自分の部屋で1人で行ったりしてはいけませんよ」
「どうしてですか?」
「あなたがなんの力をお持ちなのかまだはっきりしていません。1人でそんな事をすれば、万が一力が発揮された時、大惨事になりかねない」
「大惨事・・」
「あなたは魔王の娘だという事をお忘れなく。もしもあの方と同じ様な強靭な力だった場合、城はおろか魔界の半分は消し飛んでしまいかねませんからね」
ゾゾゾ
背筋が凍った。
「確かに、それは危険ですね」
「ええ。ですので力の訓練はこの広い場所で、四大魔将の誰かといる時のみにしてくださいね」
「はい、わかりました」
_怖すぎる・・。パパの力がヤバすぎるんだ。私そんな力欲しくない。
エレヴォスが自分の顎を撫でているのが気になった。
さっきセンジュが頭突きをした場所だ。
急に申し訳ない気持ちになった。
「ご、ごめんなさい・・顎、痛みますよね?」
「え?ええ、痛いです」
「どうします?冷やしますか?」
「そうですね・・」
エレヴォスが意地悪な笑顔で言った。
「ふーふーしてくれますか?」
「は、はい!?」
「貴女の力で冷やして下さい」
カアアア///
まさかの要求にセンジュの熱が一気に上がる。
突然の甘えん坊キャラだ。
「そ、そんなの出来ませんよ」
「でも、痛いんですよね・・ココ」
これみよがしに困った顔をされた。
「さ、今なら誰も見てませんから」
「そ、そんな・・」
「センジュ?」
腰を引き寄せられ、ぐっと持ち上げられた。
_う、うーん・・私が悪いし・・ちょっとだけなら。
「ふー・・ふっ・・んっ」
ちゅっ。
唇を尖らせた瞬間にエレヴォスの唇が重なった。
「ふあっ!?」
「クスクスクス・・なんて可愛いのでしょう。最高ですねあなたは」
「ちょ、エレヴォスさん!!」
エレヴォスはそのままセンジュを抱きしめると、頬にキスを何度も落とした。
「本当に可愛らしい方ですね」
「ちょ・・ちょちょ・・エレヴォスさん!」
「フフフ、誰も見てませんよ」
ちらり。
と辺りを確認すると、遠くに見覚えのある顔があった。
ドッキンッ
痛いくらいに心臓が跳ねた。
_フォルノスがいる!!フォルノスがっ!!
どうやら訓練の噂を聞きつけ様子を見に来たフォルノスだった。
氷の様な冷たい瞳で2人を見下していた。2人の行為に蔑んだ目をしている。
もちろんそれにエレヴォスは気がついていた。むしろ気配を感じてからの行動だった。
「おや?センジュ?どうしました?」
「あの・・フォルノス・・がっ・・います」
明らかにセンジュは動揺している。
「んー。折角ですから、見せつけてあげましょうか」
「はい!?」
エレヴォスはセンジュの首筋に舌を這わせた。
ビクンっ
いきなりされた行為に驚き、センジュの体が跳ねあがる。
「ちょ、止めてください!エレヴォスさん!!本当に!!」
エレヴォスは耳元で囁く。
「私はフォルノスと違います。あなたを道具の様に使ったりはしません」
ズキン
昨日の出来事を思い出し、固まってしまった。
「私はあなたを大切にします。一生、愛を注ぎ続けると誓います」
ズキン
ズキン
ズキン
_止めて欲しいのに・・動けない。心が痛い。どうして・・。
「止めろ、エレヴォス」
と、フォルノスがエレヴォスの背後から腕を掴んだ。
掴んでいる手に怒りを感じる。
「おや、フォルノス?どうしてここに?」
「お前らが訓練していると聞いたから見に来てみれば。ここはそういう場所じゃない。他の兵士に迷惑だ」
「すみません・・ついセンジュが可愛くて」
エレヴォスはすぐにセンジュから手を離した。
「すみません、センジュ」
「・・・いえ」
センジュはうつ向いたまま2人を見ようとしなかった。
出来なかった。
話をすり替えるようにフォルノスが口を開いた。
「で、訓練の成果は?」
「今日も特にはありませんでした」
「・・・そうか」
_どうしよう、顔・・会わせずらい・・。なんだろうこの気持ち。
自分でも何故かわからなかったが胸がずっとモヤモヤする。
その様子を察したエレヴォスは先手を打った。
「とりあえず一旦ここまでにして、部屋で休憩しましょう?」
「・・はい」
「・・・・」
フォルノスもセンジュの様子がおかしい事は解っていたが黙ったままだった。
「フォルノスも一緒にお茶しますか?」
「いや、まだやる事がある」
「ほどほどにしてくださいね」
「・・何をだ?」
フォルノスには理解出来ないエレヴォスの言葉だったが、センジュはすぐに悟った。
何度も昨夜のフォルノスをリピートしてしまう。
_早く部屋に行きたい。この2人の空気、辛すぎる。逃げたい!
センジュの暗い雰囲気を壊す様にエレヴォスは言った。
「あ、そうそう。スラム街の件、センジュも喜んでいましたよ」
「・・ああ」
突然の切り出しに、センジュの方が戸惑った。地面を見つめる目が泳ぐ。
_やだやだ、早く逃げたいのに。
無理やりエレヴォスに顔を上げさせられた。
「センジュ?どうしました?」
「あ、はい・・フォルノス、ありがとう」
「大した事ではない」
お礼を言うとすぐにセンジュは視線を逸らした。
「そうだ、私も街の様子を見てみたいですね。今度一緒に進捗を見に行きましょうね」
「あ・・はい」
エレヴォスによしよしと撫でられ、胸が痛くなる一方のセンジュだった。
「ではフォルノス。また」
「ああ」
にっこり、と勝ち誇ったエレヴォスの笑顔は流石にフォルノスにも理解できた。
背中を向けて歩く2人を、フォルノスは見つめた。
そして2人の姿が消えた時、爆音が訓練所に鳴り響いた。
バキバキバキッ・・ドオオンッ
訓練所の的が全部氷柱で破壊された。原型を留めない程に。
「あの顔・・あれでマウントを取ったつもりか」
ニヤリ・・・とどす黒い笑みを浮かべるフォルノスだ。
「ひいぃ・・」
「逃げろっ」
_今、目が合ったら消される!!!
その場で訓練をしていた兵士達は震えながらコソコソと逃げだした。
「眩しい・・」
見回しても何もない。まるで死後の世界かと思われるほど、何もない世界だった。
「なにこれ・・私、どうしちゃったんだろう・・」
辺りを見回していると、ぼやぼやとした影が現れた。
「?」
その影はゆっくりと姿をなした。
「マ・・ママ?」
その影は母親の形に変化した。
『センジュ・・私のセンジュ』
「ママ!?」
センジュの声は聞こえていない様だった。
『あなたには、人間として普通に暮らしてもらいたかった・・ごめんね』
「え?どうして謝るの?私、パパにも会えたし・・なんとかやってるよ!」
しかし訴えても声は届かない。
『センジュ、ごめんね、ごめんね』
「なんで謝るの!?なんでママ!!」
『ごめんね・・ママがいけないの』
「え?」
『あの日あの人を・・愛してしまったから』
その言葉は理解できなかった。
_ママはパパを好きだったんじゃないの?なんでそんな事言うの?
『守ってあげられなくてごめんね』
「マ、ママ!?何を知ってるの!?教えてよ!」
『センジュ・・』
「ママ!!?」
ガツッ!!
突然起き上がったセンジュに、エレヴォスは倒された。
「え!?」
「うう・・痛た・・」
どうやらエレヴォスの顎に自分の後頭部をヒットさせてしまった様だった。
「え!?ごめんなさい!何かしました!?」
「い、いえ・・平気です。というか、あなたは平気なのですか?」
「え?はい」
エレヴォスは困りながら出来事を教えた。
「突然意識を失って倒れかけたので、抱きとめたのです」
「え!?すみません!」
「ほんの少しの間でしたので、名前を呼んだらすぐに目を覚まして、私の顎に・・直撃しました」
「うわわっ・・本当にごめんなさいっ」
平謝りだ。
「貴女は大丈夫でしたか?」
「はい・・夢を見ていたみたいで」
「夢?今の一瞬で?」
「はい。ママの声が聞こえたんですけど・・」
その言葉にエレヴォスの顔が真顔になった。
「アンジュ様が、何か?」
「う~ん・・ごめんねしか言われなくて・・全然意味不明でした」
「・・・そうでしたか」
いつもにこやかなエレヴォスが珍しく顔をしかめている。
その異様な空気にセンジュは首を傾げた。
「何か、知ってるんですか?ママの事」
「いえ、何も・・ですが、もしかしたらアンジュ様の魂がセンジュに直接語り掛けてきたのではと思ったのです」
「ママが・・」
_確かに、そんな感じだった・・。でも、一体何で?
「我が君ならアンジュ様の魂ををこちらへ連れてくる事が可能なのでしょうが・・」
「それは駄目です。だってママの魂は天界へ登っている途中なんですよね?危険な場所なんですよね?」
「よくご存じで・・」
「この前パパに同じ事を言ったら、そうだって言ってたから」
「冥界と天界の入り口付近にアンジュ様の魂は彷徨っています。しかし、そこは天界の領域になりますから、天使と相まみえる事は目に見えているのです」
「天使と戦うって事ですか?」
「まあ、あちらも突然魔界の王がやってきたら流石に怯むとは思いますが、大ごとになりかねませんしね」
「じゃあ、やっぱり駄目ですよ!パパを危険な目に合わせるなんて出来ないし」
「うーん・・アンジュ様の手がかりがあればさっきの夢が何かわかるのでしょうか」
「手がかり・・かぁ」
_って言っても、ママは普通の人間なんだし。あ、ていうかお葬式の後って家はどうなったのかな!?私の存在って人間界ではどうなってるんだろう?
「あ、そうだ!」
閃いたセンジュに、勘のいいエレヴォスは首を横に振った。
「駄目です。人間界には行けませんよ」
「え?どうして?」
「危険です。それこそ裏・四大魔将の思うつぼですし」
「そうなんですか?」
「はい。その前に勝手な真似をすれば、私があの方に消されます。貴女を危険な目にあわせないようにとお達しなのですから」
しょぼん。
はっきりと断られた。しかも単純な思考回路は読まれていた。
センジュはがくりと肩を落とした。
_でもさっきのは気になる。なんであんなにママに謝られたんだろう?パパなら何か知ってるのかな?
後で本人に聞くしかないとセンジュは決心した。
「それとご忠告ですが、さっきの力のコントロールを自分の部屋で1人で行ったりしてはいけませんよ」
「どうしてですか?」
「あなたがなんの力をお持ちなのかまだはっきりしていません。1人でそんな事をすれば、万が一力が発揮された時、大惨事になりかねない」
「大惨事・・」
「あなたは魔王の娘だという事をお忘れなく。もしもあの方と同じ様な強靭な力だった場合、城はおろか魔界の半分は消し飛んでしまいかねませんからね」
ゾゾゾ
背筋が凍った。
「確かに、それは危険ですね」
「ええ。ですので力の訓練はこの広い場所で、四大魔将の誰かといる時のみにしてくださいね」
「はい、わかりました」
_怖すぎる・・。パパの力がヤバすぎるんだ。私そんな力欲しくない。
エレヴォスが自分の顎を撫でているのが気になった。
さっきセンジュが頭突きをした場所だ。
急に申し訳ない気持ちになった。
「ご、ごめんなさい・・顎、痛みますよね?」
「え?ええ、痛いです」
「どうします?冷やしますか?」
「そうですね・・」
エレヴォスが意地悪な笑顔で言った。
「ふーふーしてくれますか?」
「は、はい!?」
「貴女の力で冷やして下さい」
カアアア///
まさかの要求にセンジュの熱が一気に上がる。
突然の甘えん坊キャラだ。
「そ、そんなの出来ませんよ」
「でも、痛いんですよね・・ココ」
これみよがしに困った顔をされた。
「さ、今なら誰も見てませんから」
「そ、そんな・・」
「センジュ?」
腰を引き寄せられ、ぐっと持ち上げられた。
_う、うーん・・私が悪いし・・ちょっとだけなら。
「ふー・・ふっ・・んっ」
ちゅっ。
唇を尖らせた瞬間にエレヴォスの唇が重なった。
「ふあっ!?」
「クスクスクス・・なんて可愛いのでしょう。最高ですねあなたは」
「ちょ、エレヴォスさん!!」
エレヴォスはそのままセンジュを抱きしめると、頬にキスを何度も落とした。
「本当に可愛らしい方ですね」
「ちょ・・ちょちょ・・エレヴォスさん!」
「フフフ、誰も見てませんよ」
ちらり。
と辺りを確認すると、遠くに見覚えのある顔があった。
ドッキンッ
痛いくらいに心臓が跳ねた。
_フォルノスがいる!!フォルノスがっ!!
どうやら訓練の噂を聞きつけ様子を見に来たフォルノスだった。
氷の様な冷たい瞳で2人を見下していた。2人の行為に蔑んだ目をしている。
もちろんそれにエレヴォスは気がついていた。むしろ気配を感じてからの行動だった。
「おや?センジュ?どうしました?」
「あの・・フォルノス・・がっ・・います」
明らかにセンジュは動揺している。
「んー。折角ですから、見せつけてあげましょうか」
「はい!?」
エレヴォスはセンジュの首筋に舌を這わせた。
ビクンっ
いきなりされた行為に驚き、センジュの体が跳ねあがる。
「ちょ、止めてください!エレヴォスさん!!本当に!!」
エレヴォスは耳元で囁く。
「私はフォルノスと違います。あなたを道具の様に使ったりはしません」
ズキン
昨日の出来事を思い出し、固まってしまった。
「私はあなたを大切にします。一生、愛を注ぎ続けると誓います」
ズキン
ズキン
ズキン
_止めて欲しいのに・・動けない。心が痛い。どうして・・。
「止めろ、エレヴォス」
と、フォルノスがエレヴォスの背後から腕を掴んだ。
掴んでいる手に怒りを感じる。
「おや、フォルノス?どうしてここに?」
「お前らが訓練していると聞いたから見に来てみれば。ここはそういう場所じゃない。他の兵士に迷惑だ」
「すみません・・ついセンジュが可愛くて」
エレヴォスはすぐにセンジュから手を離した。
「すみません、センジュ」
「・・・いえ」
センジュはうつ向いたまま2人を見ようとしなかった。
出来なかった。
話をすり替えるようにフォルノスが口を開いた。
「で、訓練の成果は?」
「今日も特にはありませんでした」
「・・・そうか」
_どうしよう、顔・・会わせずらい・・。なんだろうこの気持ち。
自分でも何故かわからなかったが胸がずっとモヤモヤする。
その様子を察したエレヴォスは先手を打った。
「とりあえず一旦ここまでにして、部屋で休憩しましょう?」
「・・はい」
「・・・・」
フォルノスもセンジュの様子がおかしい事は解っていたが黙ったままだった。
「フォルノスも一緒にお茶しますか?」
「いや、まだやる事がある」
「ほどほどにしてくださいね」
「・・何をだ?」
フォルノスには理解出来ないエレヴォスの言葉だったが、センジュはすぐに悟った。
何度も昨夜のフォルノスをリピートしてしまう。
_早く部屋に行きたい。この2人の空気、辛すぎる。逃げたい!
センジュの暗い雰囲気を壊す様にエレヴォスは言った。
「あ、そうそう。スラム街の件、センジュも喜んでいましたよ」
「・・ああ」
突然の切り出しに、センジュの方が戸惑った。地面を見つめる目が泳ぐ。
_やだやだ、早く逃げたいのに。
無理やりエレヴォスに顔を上げさせられた。
「センジュ?どうしました?」
「あ、はい・・フォルノス、ありがとう」
「大した事ではない」
お礼を言うとすぐにセンジュは視線を逸らした。
「そうだ、私も街の様子を見てみたいですね。今度一緒に進捗を見に行きましょうね」
「あ・・はい」
エレヴォスによしよしと撫でられ、胸が痛くなる一方のセンジュだった。
「ではフォルノス。また」
「ああ」
にっこり、と勝ち誇ったエレヴォスの笑顔は流石にフォルノスにも理解できた。
背中を向けて歩く2人を、フォルノスは見つめた。
そして2人の姿が消えた時、爆音が訓練所に鳴り響いた。
バキバキバキッ・・ドオオンッ
訓練所の的が全部氷柱で破壊された。原型を留めない程に。
「あの顔・・あれでマウントを取ったつもりか」
ニヤリ・・・とどす黒い笑みを浮かべるフォルノスだ。
「ひいぃ・・」
「逃げろっ」
_今、目が合ったら消される!!!
その場で訓練をしていた兵士達は震えながらコソコソと逃げだした。