翔んでアルミナリア
椀も匙も木なのは、金属や陶器だと脱獄の道具や武器になるからだろうと蓮くんがつぶやく。

同じ物を見ても、わたしと彼では分析力にだいぶ差があるみたいだ。

「最初に俺が食べてみるよ」と蓮くんがひと匙すくって、もごもごと咀嚼する。
「…食べられない、ことはない」

わたしも口に入れてみた。味は薄いし、口当たりもよくないけど、蓮くんが言うように食べられないこともない。ものすごく好意的に表現すれば、素朴な味だ。

これは希望だと蓮くんは言った。
牢に入れた不審者にもきちんと食事を与えるのは、この社会の公正さを意味している。

まあたしかに、民主主義社会で生まれ育ってきた少年が考え出した世界なわけで。基本的人権が尊重されていると思いたい。

それにあの牢屋番の表情。明らかに牢屋に入れられた二人の子どもの様子に、胸を痛めていた。牢屋番でも、まっとうな人の感情を持っているのだ。それがこの社会の基本理念なのだろう。
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