片思いー終わる日はじめる日ー
 玄関から部屋までずーっと『ねぇ、どんな友だちなの?』『親御さんにはちゃんとご挨拶した?』『今のきれいな先生ねぇ、電話の声よりずーっと若いわぁ。おいくつ? 結婚してるの?』『あ! タクシー代、出さなくてよかったかしら。先生って、お給料いいのかな?』
 くだらない質問ぜめ。
「それにしても。盲腸って、お下の毛を()るんでしょ。かわいそうにねぇ、若い子が」
「お母さん!」
 やめて。
 もうやめてよ、ばかっ。
「…や、なによ、泣くことないじゃないの。――大丈夫。大丈夫よぉ、そんなに心配しなくたって。手術、成功したんでしょ? さ、あんたもさっさとお風呂に入って寝なさい。明日、帰りにお見舞いに寄ってきていいから、ね」
 ばか。
 そんなんで泣いたんじゃないやぃ。

 キョウダイ。
 姉弟、なんだよ?
 (ばく)は中井を好きなのに!
 どうしたらいい。
 あたし、どうしたらいいの?

 あたしは本当に、麦がかわいそうで泣いてるの?


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