片思いー終わる日はじめる日ー
 黙っていれば、お見舞いにはひとりで行ける。

『男の子じゃ花なんてうれしくもないだろうし。盲腸じゃ食い物ってわけにもいかないし……。ほら、非常災害時袋にさ、パパのラジオあるじゃん。あれを貸してあげれば? ひまつぶしにはなるだろ』って、めずらしく父さんが協力的で。
『じゃあ、イヤホンくらい買ってあげなさいよ。パパのなんか気持ち悪いでしょ』って、もっとめずらしく母さんが特別にお小遣いをくれた。

 病院を知っているのもあたしと中井だけ。
 中井はお見舞いには行かないって……。
 (ばく)を独り占めする…チャンスだ。
「…………」
 黙ってなさい。相田(あいだ) 有実(ゆみ)
 黙ってろ。
 命令するのに、なんでこんなに胸が苦しいの?
「石川……」
「なんだぁ?」
「あ、とで。1時間目終わったら……、話が、ある」
 はぁ……。
 ばかばかばか。
 あたしの、ばか。


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