片思いー終わる日はじめる日ー
 石川が、昼休みに臨時集会を開いてくれた。
「――っつうことで。見舞いに行こうと思うんだけど、試験前だしなぁ……」

「でも、長い時間いるわけじゃないんだし、わたし行ってもいいわ」
「そうな。オレも骨折で入院したことあるけど、も、ヒマでヒマで…オレも行くよ」
「あたしも」「おれも」「ぼくも」
「わたし、反対方向だから行けないけど、お小遣いカンパするわ。なんか買っていってあげてよ」
「なんかって本とか? 新刊コーナーあさるか、じゃあ」
「まず自分が読むの、やめなさいよ」
「あはははは」「あははは」

 涙が出そう。
 こんなに温かい、みんなの気持ち――。
 (ばく)に届かないようにしちゃうところだった。
 自分のことばかり考えて。
 あたし、やっぱり最低だ。
「よーし。じゃあ、お見舞い隊を組織するぞ。いっペんに行っても迷惑だかんな、まわりの患者さんに。とりあえず第1団は、いつにするかな……?」
「それは、わたしに任せて」
 石川がてきぱきと仕切って。
 大海ちゃんが知恵を出して。
 みんなが麦のためになにかしようとしてくれる。
「う…れ、しい……」
 うれしくてたまらない。
 いつも大声で叱られるあたしの声が、だれにも聞こえない。
 あたしの醜さがだれにも伝染しなくて――よかった。
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