片思いー終わる日はじめる日ー
「おれさ……」
 ん?
「ほんと言うと、あんまり好きじゃなかったんだ、絵……。おやじに無理やり描かされてたってかんじかな」
 え、え、え?
 それ、あたしが聞いてもいいやつ?
 言い出しっぺはそっちなんだから、怒ったらだめだよ?
「お父さんが、絵…、好きなの?」
 当然の疑問だよ。あたし、悪くないよ。
 なのにドキドキする。
「絵描きなんだ」
「へ…ええ……」
 だれ?
 なんていうひと?
 どんな絵を描くの?
 続けたいけど、どこまで踏みこんでもいいのか。
 わからないうえに、どう言っても自分の無知がさらけだされそうで、ドキドキする心臓をおさえて口にチャック。
「おまえのおやじは?」
「え。うち? うちはふつうのサラリーマ…あああ!」
 突然わかった。

「おーい。…ったくもう。こんな近くにいるんだから、もう少しセーブしてくれよ。…ホントでかいんだから、おまえの声は」
 (ばく)が耳に手をやって、顔をしかめる。
 ご…めんなさい。
 でも。でもね。
「シャツ! そのシャツ、クリーニングに出してるんでしょ」
< 57 / 173 >

この作品をシェア

pagetop