片思いー終わる日はじめる日ー
麦がほかの男の子とどこかちがって見えたのは、父さんみたいだったからだ。
シャツの板みたいにかたそうなかんじが。
クリーニング屋さんにお願いしている、父さんのシャツと同じ。
「な…んだぁ? おまえって、ひとのなにを見てんの? 本当に変わってるよな」
麦は脱いだ白衣をイーゼルにかけながら、笑いだした。
「相田のアは、アザラシのア。アザラシのおめめは千里眼。こわい、こわい」
だれがアザラシよ、麦ったら!
「帰るぞぉ」
あ、あ、あ。
…んもう。
そんな大またで歩いたらおいつけないって。
あわててカバンを持ってあとを追いかける。
美術室のドアに鍵をかけずに行こうとする麦に、
「……ねえ、鍵は? まだだれかほかに残ってるの?」
お節介だと思いつつ聞くと、
「ん? 先生」
返事と同時くらいに奥の準備室のドアが開いて。
「あれ? 電気……」
戸口に、まぶしそうに額に手をかざした中井が現れた。