夢みたもの
懐かしい。


そう思いながら、あたしは目を閉じてピアノの音に耳を傾ける。



この前もそうだった。

この曲を聴いていると、懐かしい気持ちで一杯になる。


きっと、思い出したくない過去に出会った曲なのに。



でも、もしかしたら・・


この曲を聴いていた頃は、あたしは幸せだったのかもしれない。

もしそうなら、あたしがこの曲を聴いたのは、彼に出会ったのは・・・・いつ?

嫌な思い出でないのなら、どうして覚えていないの?



彼の言葉を思い出してみる。



樫の木に囲まれた洋館

白いピアノと暖炉

懐かしい曲


連想ゲームのように、思い付く言葉を頭の中に浮かべていく。


外国人に見える少年

オーストリアとドイツ語

ウィーンの音楽学校


ピアノ


あたしの定位置




『ごめんね ひなこ』




突然。

何の前触れもなく、頭の中で言葉が響く。


あたしはハッとして目を開けた。


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