夢みたもの
ユーリに出会ったのは、あたしが何度目かの脱走を試みた時だった。



施設から少しでも離れようと、やみくもに歩いたあたしは、どこからか聞こえてくるピアノの音に足を止めた。

音楽の事なんて全然分からない。

でも、聞こえてくる音が凄く綺麗で、幼かったあたしは、ピアノの音に誘われるようにその家に入り込んで行った。



そこにあったのは

本の中でしか見た事がないような外国の家。


凄く広い訳じゃないけれど、手入れの行き届いた庭には、色とりどりの花が咲いていて、良い香りが立ちこめている。


葉が生い茂った木をすり抜けると、あたしの前にはそんな風景が広がっていた。



「・・・・」


この綺麗な音は、どこから聞こえるんだろう?


キョロキョロ周りを見回しながら、あたしは音のする方に視線を向けた。


ピアノの音が聞こえてくるのは、ガラス戸の開いた1階の端。

綺麗な格好をした女の人と、その陰に隠れるように、子供が並んで楽しそうにピアノを弾いている。


遠目でハッキリとは見えないけれど、幸せな雰囲気が伝わってきて、胸の奥がチクリと痛む。

あたしは、唯一施設から持ってきたウサギのぬいぐるみを抱き締めて目を伏せると、その場にうずくまった。


< 127 / 633 >

この作品をシェア

pagetop