夢みたもの
「・・・・・!!」



あたしは、石のように固まって動けなかった。

肩に置かれた手がずっしり重い。



怖くて、怖くて・・・足元からガタガタと震え始める。

やっとの思いで逃げ出してきたのに、また見つかってしまった。



過去の経験上、この後の流れはよく知っている。

警察に連絡されて、すぐに施設から迎えが来る。



また、あの場所に連れ戻される。



そう思うと、目の前が真っ暗になる。

逃げ出した事で、今度はどんな罰が待っているのか・・・それを考えるだけで、怖くて堪らなかった。


「どうした?」


肩に置かれた手の重みが軽くなって、背後に立っていた人があたしの顔を覗き込む。


「ん?驚いて声が出ないかな?」


「・・・・・」



あたしの視界に入り込んだのは、茶色の髪と瞳の彫りの深い顔立ちをした人だった。

テレビ以外で、生まれて初めて見る外国人。


あたしと目が合うと、その人は目をくしゃっと崩して愛想良く笑う。


「君は誰だい?うちに何か用かな?」

「・・・・・」



何も答える事が出来なかった。



『あの場所に連れ戻される』



その事が頭の中でぐるぐる回って、息苦しくなる。


あたしの居場所は、あの場所しかない。



「君、大丈夫かい?」



その言葉を聞きながら、あたしは目の前が暗くなっていくのを感じた。



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