夢みたもの
「大丈夫かい?」


優しい気遣いの言葉は、残酷なものにしか感じなかった。


手紙を読んで、あたしの身の上を知って、「可哀想に・・・」と言いながら、施設に連絡をする。

それがいつものパターン。


あたしが何度も逃げ出すので、いつの頃からか、持ち歩いている手紙には、施設の連絡先が書き加えられていた。

でも、手紙を手放せないあたしは、それを持ち歩くしかなかった。



見えない綱で繋がれたあたしは、どこにも逃げられない。


悔しくて、悲しくて、寂しくて・・・・目に涙が溢れた。



「ん?」


あたしの顔を覗き込んで微笑んでいた外国人の表情が、戸惑いを含んだものに変わる。


「どうした?泣かなくて良いんだよ?」


あたしが泣き出したのを見て慌てたのか、外国人はオロオロと落ち着きなく手を動かした。


「本当に大丈夫だから。ねぇ、詩織(シオリ)からも何か言ってくれないか?」


助けを求めて後ろを振り返った先。

あたしの視界に入ったのは、さっき楽しそうにピアノを弾いていた女の人だった。

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