夢みたもの
あたしを施設の前に置き去りにした時、オムツや哺乳瓶、数枚の服を入れた鞄の中に入っていた。



今は一緒に暮らす事が出来ないけど、生活が安定したら

5歳の誕生日までには迎えにくるから

そう書かれた手紙。



それがあたしの、物心ついた頃からの心の支えだった。



自分には母が居る。

もうすぐ迎えに来てくれる。


指折り数えて待ち望んだ5歳の誕生日。



・・・・・母は、現れなかった。



「何か理由があるんだ!」そう思って、6歳になった。

そして、もうすぐ7歳になる。



連絡先の書いていない手紙。

分かるのは、自分の名前と誕生日だけ。



手紙が入ったポケットを触ると、中からカサリと音がする。


顔を上げる事が出来ないでいるあたしに、女の人は細くて綺麗な手であたしの手を取ると、優しく笑ってうなずいた。


「もう大丈夫よ」


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