夢みたもの
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それから、あたしはしばらくユーリの家族と暮らした。



ユーリの父親はフランツといって、ずっと遠くの国と日本を行ったり来たりしながら、指揮者の仕事をしている。

ユーリの母親は詩織といって、元ピアニスト。今はピアノを教えたり、時々コンサートに出たりしていると聞いた。


あたしが「おじさん」「おばさん」と呼んでも嫌な顔一つしないで、逆に喜んでくれた2人には、子供が2人。


天使のように綺麗で、優しく明るいユーリ。

そして、ユーリより2歳年上の姉・アンナ(杏奈)


内気で大人しいアンナは、いつもおばさんの裾影に隠れるように居て、あたしと話をするようになったのは、一緒に住んで2ヶ月が過ぎた頃。

どちらかと言えば、日本人っぽい顔立ちだけれど、少したれ目がちの大きな茶色の瞳が印象的だった。



「ひなこ、ずっと一緒に居ればいいのに・・・」


一緒に絵を描いたり、花壇の世話をしながら、アンナは恥ずかしそうにはにかんでそう言っていた。


ユーリと同じ学校にも通わせて貰って、何不自由の無い生活。

ユーリの家族と一緒に過ごした期間、あたしは凄く幸せだった。


こんなに幸せで良いのかと思いながら、いつの間にかその幸せを当たり前のように感じ始めた時。




別れは突然やってきた。



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