夢みたもの
「今の言葉、鞠子に直接言ってあげればいいのに。きっと喜ぶよ?」

「・・・・え?」


一瞬目を見開いた葵は、すぐにばつが悪そうに眉根を寄せると、あたしの視線を避けるように横を向いた。


「嫌よ」


そう呟いた葵の頬は微かに赤らんでいる。

憎まれ口は照れ隠し。


あたしは小さく笑うと、頬杖を突いて葵を眺めた。


「何?」

「何か・・・いいよね、こういうの」

「何言ってるのよ」


あたしに向き直った葵は、ペットボトルのお茶を一口飲むと小さなため息を吐いた。


「それより、さっきの話の真相はどうなの?」

「さっきの話?」

「ひなこが最近、忙しそうにしてる理由よ。鞠子の仮設はおいておくとしても、確かにおかしいわ」


「嫌だな・・・ホントに何もないよ?」


話が戻った事に焦りつつ、あたしは笑って手を振った。


「何もないのに・・・2人共気にし過ぎだって」

「そう?」

「そうだよ!


そう言って大きく頷くと、葵はあたしを見つめて、今度は深いため息を吐いた。


その表情は『私は理由を知ってるけど、私からは言わないわよ』そう言っている気がして、あたしは鼓動が速くなったのを感じた。



< 203 / 633 >

この作品をシェア

pagetop