夢みたもの
やがて、しばらくあたしを見つめていた葵は、小さく笑ってゆっくりまばたきをした。


「分かったわ」

「え?」

「それじゃ、もうこの話はおしまい」


「でも・・・」そう言うと、葵はあたしの顔を指差した。


「1人で抱え切れなくなったら、ちゃんと相談しなさい?そんな疲れた顔するなんて、ひなこらしくないわ」


「え?私、そんなにヒドイ顔してる?」

「してるわよ?」


葵が渡してくれた鏡を覗き込んだあたしは、確かに疲れた顔をしている自分に思わず笑った。


「確かにヒドイ顔だね・・・」


鏡を返して葵に笑いかけると、葵はため息交じりに苦笑した。


「笑う元気があるなら大丈夫ね。それに、堤君が普通にしてるもの」

「航平?」

「ひなこを一番気にかけてるのは堤君だから、ひなこが辛い状況になったら・・・真っ先に助けてる筈でしょ?」

「・・・そう、かもね・・」


葵の言葉に、あたしは曖昧に笑った。


今回に限っては、あたしは航平の前でも気を張っていつも通りに接しようとしている。

だから、あたしが気を張っている限り、簡単には航平に見つかる事はない筈だった。



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