夢みたもの
ユーリが演奏しているのは、譜面台に置かれた黄ばんだ楽譜から推測すると、たぶんおばさんが作った曲。

その優しい曲調の曲を聴きながら、あたしはそっと目を閉じて、昼間の事を思い返した。



━・・━・・━・・━



昼休み。


葵の衝撃発言を聞いた直後、何を言われたのか理解出来なかったあたしは、一瞬の沈黙の後、笑って誤魔化した。


「嫌だなぁ・・・葵、冗談キツイよ?」

「冗談なんて言ってないわ」

「・・・・・」

「そんな顔して・・・何、納得いかないって顔してるの?」



納得出来るわけがない。



「だって・・・」


眉根を寄せて呟くと、あたしは唇を引き結んで黙り込んだ。

葵が言った事を頭の中で繰り返してみる。



航平が、幼なじみを超えた存在として、あたしを好き・・・?



「いやいやいや・・・それはないよ!!」


あたしは勢いよく首を振って否定した。



葵は何を言ってるんだろう?


航平とあたしは幼なじみ。

それ以外のそれ以上の関係でもない。

それは、葵も中学の頃から知っている筈だった。



「ホント冗談キツイなぁ・・・あたし達の関係を一番よく知ってるのは葵でしょ?」

「だから、一番よく知ってる親友から見て、そうなのよ」

「・・・・・」


真っ直ぐあたしを見つめる葵に、あたしはそれ以上の言葉が見つからなくて、再び行き場を失って黙り込んだ。



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