夢みたもの
いきなりそんな事を言われても、どうしたら良いのか分からなかった。



あたしは恋愛感情がよく分からない。

そんなあたしがどう応えたら良いのか、全然思いつかなかった。



航平は幼なじみ。

あたしの事を誰よりも理解してくれていて、いつも数歩先を歩いて、あたしを助けてくれる。


その関係は、幼い頃からずっと変わらない。

あたしにとって、航平は兄のような存在だと、いつの頃からかそう思うようになった。



「ひなこ?」

「あたし・・・・よく分かんない」

「・・・え?」


首をかしげた葵に、あたしは少し大げさに苦笑して見せた。


「だってあたし、誰かを好きになった事なんて無いもの」

「確かに、ひなこからそういう話って聞いた事ないわね?」

「そうなの。まだお子様だから、恋愛とかよく分かんない。だから、そんな事言われても困るの」

「・・・・・」

「航平は航平。あたしの幼なじみ。それだけじゃ駄目なのかな?」



「駄目じゃないわ」


少しの間、あたしをじっと見つめた後、葵は小さく笑った。


「ひなこの言う通りよ。変な事言って悪かったわ」



葵は、それ以上何も言わなかった。


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