夢みたもの
「でも、崇さんと美野里さんって、お似合いだよね」


あたしの言葉にユーリは小さく頷く。



『崇叔父さんにはずっと迷惑をかけているから、幸せになって欲しいと思う』



『でも‥』と続けると、ユーリはそこで、一度手を止めてあたしを見た。


「なに?」


あたしが首をかしげると、ユーリは小さく息を吐いて続きを書いた。



『美野里さんは良い人だし、崇叔父さんと幸せになってくれたらと思うけれど、崇叔父さんには、忘れられない人が居ると聞いた事がある』



「そうなんだ?」



『だいぶ昔の事みたいだけれど、その人の事が忘れられないから、結婚する気もないって』



『ああ見えて頑固な人だからね』そう最後に付け加えて、ユーリはまた苦笑した。



『それじゃ、美野里さんには予定通りだと伝えておくよ』



「うん」


2人肩を並べて、ノートを覗き込んで会話をする。

それが、最近のあたしとユーリの関係だった。



学校では、ユーリは今でもドイツ語しか通じないと思われていて、喋る事が出来ない事はバレていない。

遠巻きにユーリを眺めている生徒は居るけれど、それ以上は近付けないのだと、噂好きの鞠子が教えてくれた。



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