夢みたもの
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「良かった・・・」


図書室に戻ったあたしは、相変わらず人気の無い室内を見回してほっと息を吐いた。

グラウンドからは、まだ運動部が練習している声や音が聞こえてくる。


大丈夫と思いながらも、練習を終えた航平があたしより先に図書室に居るんじゃないかと思うと、図書室のドアを開ける瞬間、あたしはいつも緊張するのだった。



荷物を置いておいた席に座ると、あたしはため息を吐く。

そして、音楽室に行く前に棚から持ってきた本を手に取ると、その厚みと重さに辟易しながら開いた。


「・・・書いてある事は、本もネットも変わらない、か・・・」


細かい文字を一言一句読み落とさないように、本に顔を近付けて読み進める。

あたしが顔を突き合わせているのは臨床医学の本だった。


『心因性失声症』


「機能上は問題ない」そう崇さんに聞いてから、あたしはユーリの病気を調べるようになった。


病気の事を知れば、ユーリの為に何か出来る事があるかもしれない。

そう思ったけれど、調べてみて分かったのは、あたしに出来る事は、ただユーリの側に居る事だけだった。



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