夢みたもの
「ほら、もう帰らなくちゃ!」

「ひなこ?」

「本、片付けてくるね?」


机の上に置いてある本を抱えて棚に向かいながら、あたしは鼓動が速まっている事に気付いた。

耳元で鼓動が大きく聞こえる。

その事に焦りながら、『生物・医学』と分類された棚の前で、あたしはため息を吐いた。



葵のせいだ。


葵が変な事を言うから、妙に意識して、航平との関係がギクシャクする。



あたしと航平は幼なじみ。

それ以外の関係じゃないのに。



「ほら、貸して?」

「・・・・!?」


突然視界に現れた手が、あたしの抱えていた本を掠め取っていく。

驚いて振り向くと、いつの間にやって来たのか、隣に並んだ航平が臨床医学の本をパラパラとめくっていた。


「ひなこにしては、難しい本読んでるんだね?」

「・・・あ、うん。ちょっと・・・興味があって」

「ふぅん?」


パラパラと本をめくる航平の隣で、あたしは動く事が出来なかった。



航平との距離が近過ぎて・・・

いつもの距離感が分からなくて・・・・・


耳元で大きな音を立てる鼓動を聞きながら、あたしは熱い頬を隠す為に俯くしかなかった。



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